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プロフィール

音央

Author:音央
ブルーキャンディへようこそ!
初めての方はTopに目を通していただけると嬉しいです。

音央です。和泉雫とか蒼華とか名乗ってたりもします。
とある成人済雑食ヲタ腐女子。現在ギリギリ大学生。
NLもBLもGLも基本的にバッチ来いです。リバだけは高確率で地雷。

ジャンル(2018/7/29現在)
・イナズマイレブン
・Axis Powers ヘタリア
・隙鬼間
・艦これ
・Fate
・僕のヒーローアカデミア
・ラブライブ!
・SHOW BY ROCK!!
・ミラクルニキ
・グランブルーファンタジー
etc...

いかんせん中学の時からやってるブログなので、昔の記事なんかはしょっちゅう修正したり消したりします←
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【隙鬼間】ちいさなであい



【隙鬼間小説/隙間研究部】

幼児化やら過去捏造やらやりたい放題。そしてななみのキャラが行方不明。5歳児って実際どのくらいちゃんと喋るんでしょうね……
本文は追記にて↓


― ― ―



 とてとて、とて。
 可愛らしい足音を立てながら昼下がりの公園に入ってきたのは、綺麗な長い黒髪にヘアピンをつけ、少し緩めだが大きな黒曜石の瞳を持つ小さな少女だった。少女、とは言ったが、おそらくまだ小学校に入ってはいまい。ボールを手に、子供や老人を始め多くの人で賑わう公園の中から、遊べそうなスペースを探し出して走っていく。そして、そんな少女を追う子供がもう一人。
「まってよ、まなみー!」
「ななみってば、早くー! おいてっちゃうよー」
「まって、はやいよお……うう……」
「……む……しょうがないなあ」
 まなみ、と呼ばれた先程の少女は、仕方ないと言いつつも笑顔で足を止める。そして、彼女を追っていたななみと呼ばれた子供――まなみにそっくりだが、ヘアピンをつけておらず、凛とした瞳を持つ少女――は、息を荒げ若干涙目になりながらもまなみに追いつく。よしよし、ごめんねとまなみがななみを宥める姿は可愛らしく、誰が見てもほっこりすることだろう。
「まなみの方が足はやいのに……」
「だからごめんって、どうしても早くあそびたかったし……」
「……むう」
 ななみはぷくぅと頬を膨らませるが、すぐに二人は目が合いくすくす忍び笑い。仲の良い、おそらく双子の姉妹か何かであろう二人は、それじゃあとボールを地面に置く。まなみがそれを蹴り、ななみが蹴り返し。それを何度か繰り返した後、
「あ、っ」
「あー」
 ななみがボールを蹴り損ね、ボールはまなみの足元ではなく変な方向に飛んでいってしまった。
「まってて、とってくる」
「あ、わ、わたしも行く!」
 ボールを追って走り出すまなみと、それを追うななみ。幸運にもボールが転がっていったのは公園のより奥の茂みの方だったので、よくあるボールを追って車道に……といった展開にはならなかった。
 とてとて、とて。
 幼い少女二人がボールにようやく追いつき、まなみがそれを拾い上げたとき、

「……あれ」
「……何だよ」

 茂みの中に座り込んでいる少年と目が合った。年はまなみやななみと同じくらいで、かなりの癖っ毛。少々目つきが悪く、しかもどうやら不機嫌そうな様子。ややぶっきらぼうな声とその目に、睨まれたように思ったのかななみは少し後ずさったが、まなみはその程度で気圧されるような少女ではなかった。その上、その目がうっすら赤くなっていることに気づいてしまえば、基本お姉さん気質のまなみが無視するはずがないわけで。
「こんなとこで何してるの?」
「うるさいな、おまえにはかんけいないだろ!」
「でも、目が赤いし」
「!?」
「男の子が泣いちゃだめだよ! わたしがそうだんにのるから」
「……お、女なんかに話したってわかるもんか!」
 少年に近づこうとするまなみに対し、少年はやや苛立ったように腕を大きく振る。もちろんまなみはそれでは引かないが、ななみの方は気が気でなかった。
 もしケガでもしたらどうしよう。
 ここは大人しくまなみを連れて引くか、もしくはまなみが引かなければ誰か大人に頼んで止めてもらうか。ななみが考え始めた、その時だった。

「こらーっ! 男が女の子をいじめちゃダメでしょ!!」

「あたっ!?」
 一人の少女がまなみと少年の間に入り、少年の手をぱしんと叩いた。やはりまなみたちと同じくらいの年頃だろうが、それにしてはなかなか威力がある一撃だ。何はともあれ、ななみの願いは期せずして叶ったことにはなる。
 少女は明るい茶色の髪を短く揃え、意志の強そうな瞳を持っていた。お姉さん気質のまなみとはまた違うが、快活で世話焼きそうな子である。そんな彼女は今、手を腰に当てて少年の前に立ち塞がっていた。
「ほら、ちゃんとあやまりなさい!」
「何でおれがあやまるんだよ! おまえだっておれをたたいたじゃねえか!」
「わたしはいいのよ、バカ!」
「何だよそれ、わけわかんねえよバカ!」
「うっさい、バカ、バーカ!」
「バカって言うやつがバカなんだぞ、バカ!」
 ……そろそろ『バカ』という単語の応酬に飽き飽きしてきた頃だと思うが、それは完全に置き去りにされたまなみとななみも同様だった。
 ――バカにバカって言うのもバカバカしいよなあ……。
 まなみは上手いんだか何なんだか分からない、それ以前に初対面の少年と少女に実に失礼な本音を胸に、とりあえずどう見ても相性悪そうな二人の仲裁に入ることにした。
「まあまあ、わたしは気にしてないからおちついてよ」
「あ……なんか、ごめん」
「……わるかったって」
「わたしにはあやまらなくていいからさ、二人はちゃんと『なかなおり』しなきゃ!」
「「…………」」
 少年と少女はバツが悪そうにお互いを見る。まなみが言うなら確かにそれがいいのだろうが、コイツと仲直りって……とでも言いたそうな様子だ。それを察したのか、ななみがフォローを入れる。
「じ、じゃあ、四人でいっしょにあそぼうよ!」
 その提案に、今度はまなみを含めて三人が顔を見合わせる。そして、三人が同時に吹き出した。
「あはは、それいいかも!」
「うん、いいアイデアだよななみ!」
「なんで女ばっか……ま、いっか」
 口々に笑顔でそんなことを言うので、ななみもつられて笑顔。
 何してあそぼっか、ボールでいいんじゃない?
 そんな会話があった後、少女が思い出したように言った。
「あっ、そうだ、『じこしょうかい』しなきゃね! わたしは『なぎさ』っていうの」
「わたしは『まなみ』だよ」
「えっと、『ななみ』」
「おれは『たまき』だ」
「うん、まなみちゃんに、ななみちゃん、あとたまきね。よし、おぼえた!」
「ちょ、まてよ! 何でおれだけよびすてなんだよ!」
 少年と少女、もといたまきとなぎさの掛け合いが不仲ゆえのものではなくまるで漫才のように見えてきて、まなみとななみは大笑い。
 最初にまなみとななみが遊んでいたスペースに戻ってきて、ななみがたどたどしくボールを蹴ったり、まなみがそつなく蹴り返したり、なぎさとたまきがガチンコ勝負を繰り広げたりするうちに、時間はどんどん過ぎていった。
 もうすぐ夕暮れに差し掛かろうかというその時、
「あっ、またやっちゃった……」
「だいじょうぶだよななみちゃん、ドンマイ!」
「あっち道路だから、みんなでとりに行こうぜ」
 おお、ここに来て初のたまきの頼りになる発言。彼の言う通り、今回ななみが蹴り損ねてボールが転がった先は、さっきとは正反対の公園の入口、すなわち道路方向だった。確かに四人みんなで行った方が、飛び出すなんて可能性も少なくて済むだろう。
 四人がボールを追っていくと、ちょうど公園の入口のところにいた少年と目が合った。

「あ」
「…………」

 一瞬、その少年に全員の視線が奪われる。
 年は四人とそう変わらないだろうが、どこか大人びた雰囲気を持つ少年。しかも銀髪に金目のミステリアス美形ときている。女性ならば確実に見惚れるだろうし、男性でもなかなか無視はできまい。まあ、四人だって十分整った顔をしているのだが。実に将来が楽しみである。
 少年は四人と目が合った後、足元に転がってきたボールに視線を移す。そして当然のようにボールを拾い上げ、
「はい」
「……あ、ありがと」
 微笑みながらななみに手渡した。そしてすぐに踵を返して歩き去っていく。その姿を、四人はしばらく見つめていた。
「……かっこいい人だったねー」
「うん、テレビに出てる人よりかっこいいかも」
「あれ? ななみ、顔まっかだぞ」
「こ、これは夕日のせいだもん!」
 ななみの言う通り、もう日は落ちて景色は朱に染まっていた。
 さすがにまだ子供、暗くなる前には帰らなければ。名残惜しくはあるが、今日のところはこれでお別れである。
「じゃあ、またね」
「うん、またねー!」
「つぎもいっしょにあそぼうね!」
「またこんどなー!」
 大きく手を振って、それぞれ自分の家へ。
 まなみはななみの手を引いて歩きながら、今日の出来事を楽しそうに振り返る。ななみも笑顔で、うん、たのしかったと相槌を打つ。
「……でも、あのボールとってくれた人、だれだったのかなあ」
「やっぱり、ななみ、『はつこい』ってやつ? なーんて」
「そ、そんなんじゃない!」
 そう言うななみの顔はやっぱり真っ赤。


 一方その少年はと言うと、ななみにボールを手渡した後、実は一緒に歩いていた高校生くらいの女子と話していた。
「なんだかご機嫌みたいね、鏡也?」
「楽しそうだったな、って思って」
「別に一緒に遊んできても良かったのよ? ……とは言っても、もう夕方か」
「早く家に帰らないとって言ったのはオバサ――」
「漢字」
「……叔母さんでした、よね」
「まあね。早く駅に行くわよ、姉さんや義兄さん、それに響子が待ちくたびれてるわ」


 天村まなみ。
 天村ななみ。
 草薙なぎさ。
 八面環。
 そして、鳴神鏡也。
 これは10年前の旭町で起こった、のちの世界隙間研究部の、あったかもしれない出逢いの物語。




ちいさなであい
(運命が交わる前の、ほんのひととき)

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テーマ : 二次創作
ジャンル : アニメ・コミック

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